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「CaD」は、設計者の自邸兼事務所と併せて計画した、地域の新たな拠点として飲食店やポップアップショップ、ギャラリーの機能を持つ約5坪の複合施設である。施設があるJR山手線・目白駅近辺は、駅周辺と目白通りから20mのみが商業地域で、それ以外は第一種低層住居専用地域となっている。エリアの多くで用途に制約があるため店舗を開設できる物件が少なく、また家賃が上がったことで幹線道路沿いにはチェーン店が目立ち、個性的な店舗や施設が少ない。
 敷地は目白通りから一本奥の住居専用地域にある。通常は住宅しか建てられないが、兼用住宅であれば店舗をつくることできる。当初、店舗区画は貸すことを考えたが、自らの手で直営して「自分が欲しい場」をつくることにした。同時に地域の回遊性を高め、拠点としての機能を担うことで、地域そのものをより魅力的にする場となるのではないかと考えた。
 店舗を経営した経験がないため、設計活動で培ったネットワークを集約することで、私たち自身で店舗をつくることを考えた。店舗や飲食店は、私たちが設計したカフェや酒屋に立ち上げを手伝ってもらったり、酒を仕入れたりするなど、施主と設計者という一方向の関係から、相互に職能を活かした関係性へと編み直そうと考えた。また、ポップアップショップやギャラリーの機能も持たせることで、設計活動を通して出会った多様な人々とのつながりを活かす場としても機能していて、設計業務だけでは築きにくい多様な系を持つネットワークを構築している。

 地域の拠点として、設計者が主体的に関与しながら、地元の空き店舗でイベントを主催したり、設計したストリートファニチャーを使った出店を手掛けたりするなど、設計以外の多様な空間の活用にも関わる実践を重ねている。こうした実践があることによって、設計活動とも相互に作用し合い、地域での共生や多様なコミュニティーの形成など、都市に新たな価値を生み出す可能性を感じている。
 「CaD」を通じて、都市や地域に設計活動以外の接点や交流の「渦」を生み出すことで、新たな建築的思考と多様な実践が循環するサイクルをつくっていきたいと考えている。
用途:店舗、事務所
所在地:東京都新宿区 
竣工:2024年 
主要構造:木造
担当:須藤剛 高岩愛実
撮影:長谷川健太

Principal use: shop, office
Location: Shinjuku-ku, Tokyo
Completion: 2024
Structure: Wooden
Project team: Tsuyoshi Sudoh, Manami Takaiwa
Photo: Kenta Hasegawa