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まちと隣接する
建主はもともと敷地近くのマンション暮らしで、趣味で集めた小物や本、洋服などをたくさん所有していた。友人を招くことも多いにもかかわらず、引き戸を開け放ちワンルームのように暮らしていた。敷地は住宅密集地で、公園と小学校を繋ぐ道と行き止まりの路地が交差する小さな角地で、周囲には2階建ての住宅が多く、近年建て替えによる更新が進んでいた。
狭小地であるため、断面でワンルーム的な質をもつ住宅を模索した。床を間仕切壁のような存在(間仕切床)としてとらえ、外皮に組積造の建物において用いられる「枠梁」を回すことで、まずは床なしで構造的に成立するヴォリュームを周辺のスケールに合わせて用意した。続いて、各室の関係性を考えながら間仕切床を配置した。家族の成長や将来の老いを考慮して、下から寝室、水回り、リビングダイニングキッチン、子供室と諸室を配置し、気配や視線、光や風が緩やかに繋がり、さまざまな居場所ができるようスタディ
を重ねた。結果として、周囲になじむ2階建てヴォリュームでありながら、増改築したかのような凹凸のある形状と、可変性のあるワンルームのような断面構成となった。
また、建物を敷地いっぱいに配置せざるを得なかったため、外部空間がない中でいかにまちを感じながら暮らすことができるかについても考えた。「すぐ近くの路地」、「家の中から遠く先まで見通せる前面道路」、「空が見える窓」、「採光や通風」など、外部との関係性を考えながら開口部の大きさや位置を決めることで、さまざまなスケールで家とまちとの接続を図った。
窓から遠くに見える家族、枠梁に置いた小物越しに見える路地の鉢植え、住宅の中に落ちる日差しや電線の影。間仕切り床や枠梁、隅切りした玄関などにより、まちとの経験が連続し、人やモノとまちが結ばれ、閉じた家が建ち並ぶ現代の住宅地に能動的なふるまいを取り戻す。そうすると、住宅はまちとの関係性や日常という素朴さの価値を築くことができるのではないかと考えている。
用途:住宅
所在地:東京都板橋区 
竣工:2022年 
主要構造:木造
担当:須藤剛 山崎百々美
構造設計:金田泰裕|yasuhirokaneda STRUCTURE
撮影:長谷川健太

Principal use: house
Location: Setagaya-ku, Tokyo
Completion: 2022
Structure: RC, Wooden
Project team: Tsuyoshi Sudoh, Momomi Yamazaki
Structure design: yasuhirokaneda STRUCTURE
Photo: Kenta Hasegawa